プロジェクト概要
プロジェクトの背景
- 「ディスレクシア」は学習障害のひとつで、主として読み書きに困難を伴う状態意味します。
- ディスレクシアは、読み書きに困難があるものの、理解力・論理思考能力・コミュニケーション能力には問題がないとされています。
- 日本では人口の約8%がディスレクシアと推定されています(出典:All Japan Dyslexia, 「ディスレクシアについて」, 2023.)。
- しかし、欧米に比べて日本では、本人、教員、保護者におけるディスレクシアに対する社会的な認知がまだ十分ではありません(出典:National Center on Improving Literacy, 「Dyslexia Around the World」, 2020.)。
参考:障害の医療モデルと社会モデル
- ディスレクシアをはじめとする障害について、医療モデルと社会モデルという考え方が生まれています。
- 医療モデル(Medical Model)
- 障害を個人の身体的または精神的な問題と捉え、主に医療的な治療やリハビリテーションによって解決することを目的とする。
- このモデルでは障害を「病気」として扱い、医師や医療専門家による診断と治療が中心となる。
- 社会モデル(Social Model)
- 障害を個人の身体的・精神的な状態だけでなく、社会的・環境的な障壁によって引き起こされるものと捉える。
- 障害者が直面する困難は、社会や環境の構造によって作られるものであり、これを取り除くことが解決の鍵とされる。
本プロジェクトの狙い:社会モデル観点でのディスレクシア課題の解決
- ディスレクシアについて、個々の支援方法や支援事例は蓄積されつつありますが、社会も出る的な観点での研究、実態の把握はまだ不十分と言えます。
- 特に、ディスレクシア児童の学習環境の全体像は十分に明らかにされていません。
- 特に学校における支援の要となる、「教師の勤務実態」に直目した研究はまだ少ないのが現状です。
- そこで、本プロジェクトは、デザインリサーチの方法を用いて、障害の社会モデルに基づく支援策の立案に寄与することを狙います。
- 社会モデルに基づく支援を検討する場合、その研究的性質より意図せず現状の社会規範を肯定し、強化してしまうことがあります。
- 本プロジェクトでは、文字環境に着目はしつつ必ずしも文字での情報伝達にこだわらない、「デジタル化」将来的な可能性も含めて広範囲に捉えるといった姿勢で、かならずしも現状の社会にこだわらない態度を持ちたいと思っています。
研究の進め方
- デザインリサーチによるディスレクシア児童をめぐる環境モデルの構築
- デザイン分野の調査手法Contextual Inquiry / Work Model手法を用いて、小学校の環境での訪問調査を行い、調査結果をモデル化する
- 個々の環境のモデルを統合し、分析を行う
- ワークショップによるディスレクシア児童の実態の理解
- 子供たちの文字環境嗜好の多様性を理解するため、子供たちとプロのデザイナーによって、一人一人の子供たちに向けた版面のデザインを行う。